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光が死んだ夏の一考察

コラム

未分化な情と土着ホラーの交差点

友情か愛情か、その境界が曖昧なまま物語は進む。
よしきが“光”に向ける感情は、
恋愛に還元されることなく、ただ「一緒にいたい」
という切実な願望として漂う。
BL的な構造を持ちながらも、
それは未分化な情動のまま、ホラーと融合する。
戻ってきた“光”は既に光ではない。
それでもよしきは目を逸らす。ここにあるのは、
喪失を受け入れられない少年の祈りだ。

物語の舞台は江戸川乱歩や横溝正史を思わせる
因習に満ちた田舎。
「ノウヌキ様」という土着信仰が、
異形の存在と人間の境界を曖昧にする。
だが謎解きは主軸ではない。重要なのは“空気”だ。
暑い夏の空気に混じる違和感が、
読者の背筋をじわじわと冷やす。

結局この作品は、複雑に見えて単純な物語だ。
「それが光じゃなくても、光であってほしい」
というよしきの願い。
それは、誰もが一度は抱える
喪失と執着のかたちであり、
ホラーという形式を借りた青春の断面でもある。

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