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フロントマンの憂鬱

コラム

バンドの所有権とは

スティングがユニバーサルに
全楽曲の版権を売却した背景には、
単なる経済的合理性ではなく、
信頼できる場所に作品を集約し、
次世代へ橋渡しする
という終活的な美学がある。
だが、その静かな決断の裏には、
かつてポリスの絶対的フロントマンとして君臨し、
作詞・作曲・ボーカル・ベースを一手に担い、
バンドを私物化したという影がつきまとう。
メンバー間の緊張は伝説的で、特に
「Every Breath You Take」の著作権を巡る確執は、
2025年に元メンバーからの訴訟として再燃した。
全てを自らの手で創り上げたがゆえに、
彼の音楽は個人の表現であると同時に、
共同体の不在をも映し出す。
FIRE(経済的自立と早期リタイア)
を体現する彼の生き方は、
資産312億円を築きながらも
「子どもに遺産は残さない」と語る潔さに表れ、
創作と所有の境界を問い直す。
スティングの終活は、音楽の帰属を再定義し、
孤高の創作者としての矛盾を
静かに受け入れる儀式なのかもしれない。

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