PR

Neue Musik

コラム

無時間の常温にて

音楽の価値は、本来いつだって平等だった。
生まれた瞬間の震えも、消えゆく余韻も、
誰のものでもなく、ただ世界に開かれていた。
けれど、時代はいつの間にか
その価値に値札を貼り、
ランキングという檻に閉じ込め、
一部の利益のために使い捨てる仕組みを作った。
オールドメディアは、まるで神のふりをして
「これが価値だ」と宣告し続けてきた。
だが、音楽は本来そんな温度では生きていない。
熱狂にも冷笑にも染まらず、
ただ“常温”で呼吸する存在だ。
時間の外側で、誰にも触れられない場所で、
静かに、確かに、響いている。
思えば、もっとも純粋だったのは
バッハが神のために書いた
あの祈りの旋律かもしれない。
市場も、権力も、消費も、
まだ音楽の上に影を落とす前の時代。
音がただ音として、
世界の中心に置かれていた頃。
いま、私たちはその純度を思い出す必要がある。
音楽は奪われた価値を取り戻すために
過去へ戻るのではなく、
無時間の常温へと帰っていく。
そこには、誰にも支配されない
本来の音楽の姿が、静かに立っている。

コメント

タイトルとURLをコピーしました