PR

惚れ薬は彼女の罠

ポエム

人工的な恋の生成

惚れ薬って、本当に作れると思う?晴れた午後、
図書館の隅で彼女がぽつりとつぶやく。
友人たちは笑うけれど、彼女は本気だ。
生物化学専攻の彼女にとって
恋もまた分子構造の絡み合い
ドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリン
を調合できたら人は恋に落ちるはず、
そう信じている。

実験用マウスには思わせぶりな
名前をつけて、日々観察。
これはカケルで、こっちはユウナね。
恋愛ホルモンの投与後の行動を記録して
恋愛ドラマのような展開を期待し
Excelの表には冷静にデータが並ぶ。
毎日の研究ノートには、時おりハートの落書きも
誰もが真面目なフリしてるけど、
キャンパスの恋は案外、
研究室で芽生えるのかもしれない

惚れ薬はまだ完成してない。
でも彼女は、少しずつ人を好きになるって
どういうことかを知っている。
誰かを想う、その化学式では表せない
気持ちこそ研究の本質
「愛って再現性がないから、面白いんだよね」
白衣の袖から、ピンクのリングがちらりと見えた

コメント

タイトルとURLをコピーしました