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小さな惑星の書記係

ポエム

記録と記憶を間違えた少年

あるところに、
とても小さな惑星があった。

住民は一人。
名前は「記録係」。

彼の仕事は、
宇宙で起きたことを
すべてメモすることだった。

流れ星が通れば一行。
彗星が笑えば一行。
ブラックホールがくしゃみをすれば三行。

彼は黙々と書き続けた。

ある日、
宇宙の端から風が吹いた。

「そんなに書いて、どうするのだい」

風は軽く問いかけた。

記録係は答えた。

「忘れないためだよ。  
忘れたら、宇宙がどんな顔をしていたか  
わからなくなるから」

風は少し考えた。

「でもね、  
書くことに夢中になって、  
宇宙を見なくなったら本末転倒じゃないかい」

記録係は手を止めた。
ペン先が震えた。

たしかに最近、
星の光を“直接”見ていない気がした。

ページばかり見ていた。

そこで彼は、
ペンをそっと閉じた。

そして、
惑星の外に出てみた。

星は思ったより明るく、
風は思ったより優しく、
宇宙は思ったより広かった。

記録係はつぶやいた。

「これは……メモに書ききれないな」

風が笑った。

「そういうものさ。  
 大事なことは、  
 だいたい書ききれない」

その日から記録係は、
メモをとるのをやめなかったが、
宇宙を見る時間を増やした。

ページは少し空白が増えた。

でも、
その空白こそが
彼の惑星を少しだけ
豊かにした。

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